旬と産地
- 冬至ナマコというように、ナマコの旬は冬。
- 水温が低くなると盛んに活動するため、肉がよく締まりコリコリとしている。
- 漁獲が多い県は、北海道、青森、山口、兵庫、石川等。
特徴
- ウニやヒトデなどと同じ棘皮(きょくひ)動物門で、ナマコに属する動物。世界に数千種類あるが、日本には約100種類ほど存在する。すべて海産で、磯から超深海底まで分布している。
- 体は円筒形で、腹面に管足、背面にいぼ足がある。体壁は非常に柔らかく、ウニのように外骨格性の表皮ではないが、石灰質の骨片を多く含んでいる。
- 円筒形の体の前端に口があり、口の周囲には先端が細かく枝分かれした触手が20本ほど並んでいる。消化管は長く、体内にS字状に回転している。
- 海底の泥の中で暮らしており、泥に混じって沈積している有機物(バクテリアや微生物)だけを食べて栄養とする。ゆっくりと前進しながら砂泥を消化管内に取り込むので、細長いうどんのようなふんが体の後ろに残る。
- 再生力が強く、半分に切断されても生き残る。また、内臓を肛門から吐出しても再生する。
- 水温が低いと活動が盛んで、水温が高くなると穴を掘りジッとしている。
歴史
- 古くは「海鼠」とかいて「コ」と呼んだ。「コ」は本来、「蚕」を指して言ったものが、後に蠕虫の形をした動物一般を広く呼ぶようになったので、混同を避けるため、家の中で飼うのを「カイコ(飼い子、蚕)」、また、生(鮮)で食べるのを「ナマコ(生≪鮮≫海鼠)」と区別して呼ぶようになったと言われる。
- 「古事記」(712年)や「延喜式」(905年)に既にその記載がある。
- 江戸時代には、ウニやカラスミとならび、珍味として重用された。
種類
- [ マナマコ ]
- 日本各地でもっとも一般的なナマコ。体調20~30cmで太さは6~8cm。アカナマコ、アオナマコ、クロナマコがある。北は北海道から南は九州まで、太平洋および日本海の沿岸浅海に広く分布する。
- [ マナマコ・・・アカナマコ ]
- 体色が褐色で濃淡の斑紋を持つ。沿岸の岩礁地帯に多く分布。うまみがあり、関西地方で好まれる。
- [ マナマコ・・・アオナマコ ]
- 背が暗緑色から黒色で腹は黄色から青色。内湾性で主に砂泥地帯に多く棲息している。身が柔らかく関東で好まれる。
- [ マナマコ・・・クロナマコ ]
- 背も腹も黒い。あまり食されない。
- [ キンコ(金海鼠)]
- 東北地方から北海道、千島列島の浅海に分布する寒冷性のナマコ。体は長楕円系で不規則な斑紋がある。生殖腺が黄色を帯びることから、海底の砂金を取り込んでいると思われ、キンコの名前がある。干して中華料理などに使われる。
栄養
- 90%が水分で、わずかにタンパク質を含有している。カロリーがに低く、肥満防止、ダイエットに効果的。他に、肝臓・腎臓の機能を高めて、血液浄化、造血作用があり、毛髪を美しくする。精力を増し、足腰を丈夫にし、排尿困難を改善する。
- なまこが持つサポニンの一種、ホロトキシンという成分は、強い防カビ作用を持ち、白癬菌を原因とする水虫やタムシの治療薬として実用化されている。また、カンジダ症の病原酵母やトリコモナス症原虫にも有効である。
- なまこは朝鮮人参と同じくらいの薬効があると信じられており、「海の人参」と称して宮廷料理にも使用されている。中国の東北地方では、ある種のナマコを慢性肝炎の治療薬として利用される。また、補腎強壮効果もあるといわれ、動脈硬化を予防する作用、性機能低下の回復作用、便秘の改善や利尿効果もあるといわれる。日本でもなまこの薬効は認められていて、風邪(愛知県幡豆、京都府舞鶴)、解熱(広島県沖美町、山口県江崎、京都府田井)、胃薬(愛知県幡豆、香川県相生、熊本県登立)、利尿(愛媛県今坊)、強精(愛知県幡豆、鹿児島県福山)、凍傷(和歌山県三尾・由良、京都府舞鶴)、あるいは腫れ止め(広島県沖美町)などの効果を期待した民間療法が存在する。
- 一見無防備にみえるなまこが海底で生き延びているのは、サポニンの持つ強力な殺菌能力のおかげ。魚をなまこと一緒に小さい水槽に入れておくと、なまこを食べるどころか逆に魚の方が死んでしまうほどである。仮に魚がなまこを襲ったとしても、なまこは驚いて内臓を吐き出してしまう。内臓を食べた魚は濃縮されたサポニンを吸い込み死んでしまう。そして、なまこは再生する・・・恐るべし生命力!
選び方・保存
新鮮なものほど、肉が硬くこりこりととした弾力性がある。保存は三杯酢につけ冷蔵庫で数日間保存できる。あかなまこは、体色が赤褐色で、いぼの少ないものを選ぶ。皮がとろっとして溶けかかっているもの、いぼがくずれているものは避ける。あおなまこは、体色が、青みかかった灰色。大き過ぎるものは風味に欠ける。
下ごしらえ
- [ 生のなまこの場合 ]
- ナマコを生食するのは、日本料理特有のもの。「振りナマコ」と「茶振りナマコ」の2種類がある。振りナマコは、まな板の上にナマコを置き、塩をタップリかけ、深めのザルをかぶせ、ゆする。粘りが出て、身が縮んだら流水で洗う。コリコリと固めに仕上がる。茶振りナマコは、ナマコを開いてワタを取り、1cm程の小口切りにし、薄塩で20分おく。ザルに入れ、70~80℃の番茶に入れ、2~3回ゆすって塩分を抜く。仕上がりはやわらかめ。
- [ 干しなまこの場合 ]
- 毎日水に浸して火にかけ沸騰寸前で火を止め、ゆっくり冷まし翌日水を換えるという作業を約1週間繰り返す。また、 なまこの表面と中に切れ目を入れ、毎日少しづつ丁寧に掃除していく。
なまこの加工品
- [ このわた ]
- なまこのはらわたで作った塩辛。なまこのはらわたを抜き取って集め、海水でよく洗ったのち、さらに水洗いしてざるに上げ、20~30%の塩を加えてまぜる。塩味のなれたところで再び水けをきり、貯蔵する。岡山、能登産が有名。寒い時期に作ったものほどおいしいと言われる。カラスミ、ウニとならび、天下の三珍として貴重である。うずらの卵を落として酒の肴にしたり、ご飯の添え物などにする。また、熱燗を注いで、このわた酒にすることもある。名前の由来は、「海鼠(なまこ)の腸(わた)」なので「このわた」。
- [ くちこ(このこ)]
- なまこの卵巣。1月~3月のなまこからしか採れないため、このわたよりも貴重な珍味。生くちこはこのわた同様塩漬けに したもの。色も味もウニに似ていて、そのまま酒の肴となる。 干しくちこは数枚重ねてひもにかけ、三角形に整えて天日で乾燥させる。干し口子は、軽く火であぶって食する。「このこ」の名前は、「なまこの子」という意味。
- [ きんこ(いりこ)]
- なまこの内臓を除いて茹でた後乾燥させたもの。中国料理の高級食材として水で戻し煮物、いため物などに利用。
なまこに関する昔話
近年では、その漁獲量が減少傾向にあるが、その昔、なまこはどこにでもいる海の生物であり、いろいろな昔話が伝承されている。
- 『ナマコとイルカがかけくらべをした時、歩みの遅いナマコは、次々と伝言して決勝点のナマコにイルカと競争していることを伝え、身代わりになってもらってナマコが勝った。』(岩手県種市)
- 『鯨とナマコが日本を一周する競走に出たが、鯨がどこの沿岸に行っても既にナマコが着いていたので、とうとうカブトを脱いだ。』(山口県大海)
なまこの名前を持つもの・・・なまことは関係ない。
- [ 海鼠釉(なまこゆう)]
- やきものの釉薬(ゆうやく=うわぐすり)のひとつ。類似の釉薬を二重掛けして釉の流動によって斑紋や流紋などが現れる。信楽や高取などに多い。
- [ なまこ壁 ]
- 蔵造りに多く見られる工法。塗り壁に平瓦を貼ったもので、壁の耐水性を高めている。漆喰(しっくい)よりも耐水性に優れている。平瓦の間の目地に、漆喰をかまぼこ状に盛り上げて塗り、この目地の漆喰の形がなまこに見立てられている。