旬
- 旬は秋から冬にかけて。白子はフグが充実してくる12月~3月にかけてよく出回る。
- 延縄漁(はえなわりょう)で、秋の彼岸から春の彼岸まですなわち9月末から3月末がシーズン。瀬戸内海産では季節を問わず採れ、また養殖や冷凍物が多く出回っているため1年中美味しく食べることができる。しかし、冬のフグが一番美味しいといわれている。
- ポン酢に入れる柑橘類(かんきつるい)や小ネギが、冬から春にかけて美味しくなり、フグのおいしさをいっそう引き立ててくれる。そして熱いヒレ酒も寒い時期こそよく似合う。
- 天然トラフグの解禁初漁は9月末で、本場といわれる下関の南風泊市場で初せりが行なわれる。
歴史
日本人がフグを食べ始めたのは縄文時代からではないかと考えられている。縄文後期の貝塚からフグの歯や骨が発見されている。ただ、フグ食が広く普及したのは、江戸時代半ば過ぎだといわれている。このため、フグ中毒死する人も多く、各藩でフグ食禁止令を設けるほどだったと語られている。
特徴
- フグは高級魚として有名ですが、毒魚としての悪名も高い。
- 体は円筒形で、やや長い。腹びれは無く、背びれは1つで、軟条のみからなる。
- 胃に特殊な弁があり、水や空気を吸い込んで腹をいちじるしく膨らませることができる。
- 歯はくちばし状になっていて、目を閉じることができる。
種類
ひと口にフグといっても非常に種類が多く、一般的にフグと呼ばれるものだけでも約40種類以上あるといわれる。そのうち食用とされるほとんどが「トラフグ属」に分類されるもので、約16種類あるが、そのうち代表的なものは、トラフグ、カラスフグ、 マフグ、ショウサイフグ。
- [ トラフグ ]
- 全長約70cm。食用とされるフグのなかで一番おいしく、最高級とされるフグの王者。胸びれ後方に白い縁どりのある大きな楕円状の黒斑があり、体の背面と腹面に小さなトゲが密に分布している。日本各地の近海、朝鮮半島西岸、黄海(こうかい)、渤海(ぼっかい)および東シナ海に分布する。肉、皮および精巣(白子)は無毒。卵巣、肝臓などの内臓には強い毒を持っている。
- [ カラスフグ ]
- 全長50cm。形態はトラフグによく似ているが、尻びれが黒いのが特徴。日本海側の本州中部以南、黄海、東シナ海に分布し、トラフグに比べてやや南にかたよっている。毒性はトラフグとほぼ同じ。肉、皮は無毒。肝臓、卵巣は強毒。また、腸にも毒がある。
- [ マフグ ]
- 全長約45~50cm。表皮にトゲが無くなめらかなことからナメラフグとも呼ばれる。日本近海、東シナ海に分布。肉、精巣は無毒。大衆向けの普通のフグ割烹でよく出されるのがこのフグである。
- [ ショウサイフグ ]
- 全長約35cm。北海道を除き本州各地、九州までの沿岸のどこでも見られるごく普通のフグで、釣りの対象魚、あるいはフグ鍋の材料としても有名。皮は強毒。肉は食用だが弱毒なので食べすぎには注意。ナゴヤ、ナゴヤフグという地方名がある。その意は「食べれば死ぬ 、身の終り(美濃、尾張)」=名古屋のシャレからきているようだ。
栄養
- フグには、うまみの素であるグルタミン酸やイノシン酸、タウリンが豊富。このうまみの素が豊富なので、鍋物にしたときに、ダシをいれなくてもフグをいれると、フグ独特の甘味とコクがでる。
- タウリンは、血管、心臓、肝臓、気管支などのさまざまな臓器や器官の障害に有効。動脈硬化や高血圧症に改善効果あり。
- 背側の黒い部分に、セレンというミネラルが含まれていて、抗がん作用や更年期障害の予防に。低脂肪なので、ダイエットの人におすすめ。
- ふぐの皮を軟らかくなるまで煮て、みりんとしょう油で味付けをして、冷やしかためた「煮こごり」ゼリー状に固まる。この中にはムコ多糖類が含まれ、皮膚の弾力性を保つ働きがあり。
フグ毒
- フグの毒の正式名はテトロドトキシン(フグ科の学名テトロドンティダエに由来)。この毒は、加熱その他の料理法では分解することはない。普通は、肝臓と卵巣が強い毒性をもち一般に肉は無毒だが、なかには肉に強い毒性を持つものもある。毒の強さや毒をもつ部分は種類によって異なる。同じ種のフグでも固体によって差がある。また季節によっても変化する。一般に産卵期(12~6月)に毒性が強まる。テトロドトキシンの毒性は非常に強い。
- 中毒症状は、早い場合には20~30分、通常は3~6時間で症状が出る。唇、舌、顔面、指先のしびれから始まり、やがてしびれは麻痺(まひ)に移り、手足から全身に広がる。吐き気や頭痛を伴うこともある。さらに症状が進むと、運動不能、感(知)覚の麻痺、言語障害、血圧低下が起こり、呼吸困難となり、死に至ることもある。中毒になった場合は、食べた物を吐き出させ、胃の洗浄を行い、人工呼吸などを施すのが最良の治療法で、いまだ決定的なものは見つかっていない。
- フグ毒はフグが生まれながらにして持っているものではなく、どこの海にでもいるビブリオアルギノティリカスという細菌がエサと一緒に体内に入ると、毒に変じて体内に蓄積される。なので、毒無し、あるいは毒性の低いフグを養殖することが可能。
代表的な料理
- フグといえばやはり刺身と鍋。東では「ふぐ刺し」「フグチリ(鍋)」というのに対し西では「テッサ」「テッチリ」という。西でいう「テツ」とは鉄砲のことで、「鉄砲はよく当たり、フグもよく当たる」とシャレたもの。フグ刺しは皿の外側から内側へと並べて盛られている。内側から食べ始めるのが順序。フグチリの最後の締めは雑炊。この雑炊を美味しく味わうコツは、チリ鍋の時からアクをこまめに取ること。
- 白子は鍋のほかにも、湯引きしたり焼いたりして、ポン酢しょうゆが合う。
- 焼いたヒレを熱燗の中に入れて飲むヒレ酒など身の部分以外でも十分楽しむことができる。
「ふぐ」と「ふく」
関東、東北では「ふぐ」、関西、西日本では「ふく」と呼ばれている。フグが腹を膨らませる習性があるので「ふく=布久」と呼ばれるようになったのが始まりで、関東以北ではそれがなまって「ふぐ」と呼ぶようになったようだ。また関西以西では、「ふぐ」と濁ると「不具」「不遇」に通ずるとして忌み嫌い、「フクは福に通じる」と縁起をかつぐという意味もあるようだ。
フグは漢字で「河豚」と書く
「河豚」は中国名。なぜ「豚」か。それはフグが怒りっぽくて、怒るとすぐに口をとがらし、腹を膨らませるところがブタ、すなわちイノシシに似ているところから「豚」と書くのだといわれる。中国でいう豚は猪。では海にすんでいるのになぜ「河」なのか。その由来はメフグというフグにある。このメフグは中国で食用とされており、川を遡上するのが特徴。したがって昔から揚子江、白馬江など中国大陸や半島のかなり上流にまですんでいて、食用にしてきたことから「河」という字が使われたという説が有力。
「シロ」と「クロ」
トラフグとカラスフグの正式名は1949年(昭和24年)に付けられたもので、それ以前は両方ともトラフグだったらしい。「シロ」はトラフグ、「クロ」はカラスフグを指す。トラフグの目印は胸びれ近くにある黒斑で、カラスフグにも同じような黒斑があり、2つはよく似た姿をしている。これらは尻びれの色で区別することができる。トラフグのものは白く、カラスフグのほうは黒。「シロ」と「クロ」と呼ばれるのはここからきている。2つは姿は似ているが、市場価格は大きく違い、味の方はというと断然トラフグのが勝っている。しかし刺身になるとトラフグと区別がつかないとか。
家庭で味わう
フグの調理は、フグ調理師免許が必要なので、素人が扱えるものではない。しかし、最近ではスーパーなどでフグチリ用のセットパックが売られていたり、フグの刺身を産地直送してくれたりと家庭でもずいぶん手軽に味わえるようになった。購入する際の鮮度の見分け方は、身が締まって弾力のあるもの、さらに身に透明感のあるものを。白子を選ぶときも同様です。