歴史
「奈良時代から伊勢神宮などに鏡餅が供えられていた」という記録がある。餅を食べる習慣は、武家の年中行事が商家へと伝わり、商家から農家へ。農家では神仏や農具にもちを供え、豊作と家内安全を祈りおそなえとして用いられてきた。
もちの種類と原料
もちの原料は普通、もち米が使われますが、他に、粟(あわ)・黍(きび)・蕨(わらび)などからつくったものもある。中部地方の「五平餅」や秋田の「きりたんぽ」は、うるち米から作られたもの。
- [ 鏡(かがみ)もち ]
- 「お鏡」とも呼ばれる、正月の祝いのためのもち。大きな平たい円形を大小2つ重ねにします。2つのもちは陰と陽、親と子などに例えられ、床の間・神棚・仏壇・机などに飾って その年の安泰を祈ります。正月の11日は鏡開きと言われ、鏡餅を割って食べます。平安時代からの習慣。
- [ もち花 ]
- 正月の祝いに使うもので、もちや米粉のだんごを小さく丸め、色をつけて、柳・梅・樫などの若木の枝につけて飾ったもの。地方によっては、まゆ玉・もちの花・稲の花などとも呼ばれています。五穀豊穣を祈願して作られる。
- [ 菱(ひし)もち ]
- 3月3日の桃の節句(ひなまつり)に用いられるもので、のしもちを菱形に切ったもの。二枚重ねにするときは白と青、三枚重ねは白・青・紅あるいは白・青・黄、五枚重ねは白・青・紅・白・黄に重ねて雛段(ひなだん)に供える。
- [ 柏(かしわ)もち ]
- 柏の葉に包んだあんこ餅で、5月5日の端午の節句もちとして作られる。この習慣は江戸時代の寛永年間からで、それ以前はちまきが用いられていた。現在、ちまきも柏餅も食べる習慣がある。
- [ 雑煮(ぞうに)]
- もちを主とし、いろいろなものを混ぜた汁物。正月の祝い膳の中で、最も大切な献立のひとつとされている。雑煮の作り方、だし、材料は地方により様々。大別すると、関西は丸もちを用い、関東では切り餅を用いる。味付けは、東京は主としてすまし汁を用い、関西・四国・九州は味噌仕立てにすることが多い。
餅の語源
- 粘りのある飯という意味で「モチヒ」又は「モチイヒ」と呼んでいたことからきたという説。
- 腹にもたれるという意味の持飯(餅いい)。
- 携帯に便利であるから持飯。
- 丸い形が望月(もちつき)に似ているので、円満という意味を持たせたとする説。
栄養
- 餅は、体を温める効果があるので、冷え性の人によい。雑煮、焼餅、きな粉餅、草餅など。大根おろしをからめて食べると、消化がよくなるので、胃弱の人は胸焼けしない。
- 餅は昔から、授乳期に食べるとよいとされている。ご飯と比べると、量のわりに高エネルギー、高タンパクなので、おなかのもちもよく、体を温める効果あり。母乳の分泌を高めるには、水分を多くとることが重要。お雑煮にして、肉類、野菜類をタップリ入れて食べると、水分もとれるし、栄養面も補える。
保存法
- [ 水餅(みずもち)]
- 月や寒中についた餅を水に浸しておく方法。水がたっぷり入った状態にしておくとカビも生えないし、餅のデンプンもあまり変化せずおいしさが保てる。
- [ かき餅あられ ]
- ついた餅をのし餅かナマコ型にして薄く切り、広げて陰干しするか、あるいは縄で編んで吊り下げて一週間ほど干す。寒に干すとよく乾くため寒中につくるのが一般的。あられは餅をさいの目に切ったもので、炒めるか揚げるかして砂糖じょうゆをからませて食べることが多い。
- [ 凍み餅・氷餅 ]
- 寒冷地での寒気を利用して自然凍結させた餅のこと。一年で最も寒さが厳しい時に大量の餅をつき、切り餅にして一連が10個ほどの餅をわらで編みむ。その餅を水に漬けて、軒先や戸外で寒風にさらし十分に凍らせた後、乾燥させたもの。1ヶ月くらいでできた凍み餅(しみもち)は、さくさくとした歯ごたえで噛むと甘さがあり、夏頃までは保存が効く。
お祝い事とお餅
古代もちが儀式、祭祀(さいし)に用いられたことから、もちは「ハレの日」の食べ物として扱われていたようで、節句や人生の重要行事、祭典に餅をついて祝う習慣が今でも残されている。特に神仏に供えるものは「おすわり」とか「おそなえ」と呼ばれている。
- [ 着帯(ちゃくたい)の祝 ]
- 妊娠5ヶ月の戌の日(いぬのひ)に、着帯するのは小さく生んで大きく育という古老からの伝承によるもので、犬のようにお産が軽くすむようにとの意味もある。このお祝いには、紅白餅又は饅頭、赤飯。
- [ 出産(しゅっさん)祝い ]
- 無事出産して3日目におはぎを近所にくばる風習。7日目を迎えるとお仲人さんを始め親戚 、友人、近隣の方々を招いて命名の披露祝を行う、名は一生ついて廻るので古老や鑑家に名づけてもらう人もいる。この祝には、赤飯・紅白餅・おはぎ・紅白饅頭・おめで糖・その他。
- [ 初節句(はつぜっく)]
- ひな節句で誕生して最初に迎える節句で、3月3日雛祭を始めて迎える女児には親族緑者から人形が贈られる。そのお礼には、草餅・桜餅・あられ・赤飯・ひし餅・ひな菓子・金花糖等を返礼として用います。桜餅や草餅などを包装した上に造花の桃の花をそえるのも良い。
- [ 端午の節句(たんごのせっく)]
- 男児が始めて迎える5月5日、ひな節句と同じくお祝いする日で、菖浦(しょうぶ)の節句ともいう。邪恵を除く菖浦と葉の落ちない柏により子供の繁栄を祈る日、節句のお餅は、柏餅・ちまきだんご・黄白餅その他。
- [ 満一歳 ]
- 生後1年目を迎えた初誕生には誕生餅をつくってお祝いする。これを子供に背負わせるが、まだ足腰がしっかりしていないので二、三歩歩く程度でしりもちをついてしまう。誕生餅又は力餅という。おはぎ・どら焼など返礼に使う。
- [ 七五三の祝 ]
- 七五三の祝いは男子3才と5才、女子3才と7才に行われます。毎年11月15日を吉例とする千年までも長いきするようにと神に祈る行事。男女とも3歳になってはじめて髪を伸ばしたので、これを「髪置きの祝」と称し、5歳になると初めて袴を着けるので「袴着の祝」、7歳になると付け帯を解いて大人の帯を締める「帯解き(おびとき)の祝」となる。この祝には千歳飴・鳥の子餅・オキナ餅・赤飯・紅白饅頭。
もちと行事や農作業のかかわり
農家では行事や人寄せのたびに餅をつく習慣があり、農作業とも深い関連があった。田植えが終わった時は「さなぶりのもち」、刈り上げを終えたときは「刈上もち」、秋の取り入れを終えた庭仕舞いでも餅を振る舞った。農家の人々は餅をつくことで作業のめどを立てたり、家族の融和を図ったり、村の協調を進めてきた。
お餅をついてはいけない日
お正月のお餅は年末の28日か30日につくものと言われていて、29日は「苦」がつくからついてはいけないとされている。また、十二支のうち丑の日には餅をつかないと決めている所もあるそう。なぜかというと、せっかくついたお餅が、牛に食われてしまうとともに、葬式の「はらいもち」になって不幸が起きると言われているからだそうです。
臼(うす)と杵(きね)
お餅といえば臼と杵、今では餅つき機なる便利なものが開発され、あまりお目にかかる機会はないが・・。日本人は昔から人間の霊魂と穀物の霊魂を渾然一体として意識し、穀霊の造形物であるお餅を食べることによって、霊魂の再生をはかろうとしていた。そのお餅をつくる用具である臼と杵は神聖なもので、ある種の呪力をもつものと考えていたので、臼や杵には多くの俗信や儀礼をともなっていた。一般に農家では土間の大黒柱のそばにおいて大切に扱い、家を新築したときはまず臼を運び込む。また火事にあったときなどは、いちばん先に臼を運び出したというほど、大事なものであった。
ウサギのモチつき
月の表面は、いろいろなものの形に見たてられてきたのは今さらいうまでもないが、古代インドの昔話に月のうさぎが現われていることから、その古さがうかがい知れる。ヨーロッパでも昔は、「月とうさぎ」が今よりももっと密接な関係にあったということにつながる。中国では月うさぎのついているものは、餅ではなく仙薬といわれている。うさぎが餅をついているとしたのはどうやら日本人だけなのかな・・・。